サランスクの奇跡を導いた「ハリルの遺産」「ザックの遺産」(現代ビジネス)

彼らは勇敢だった。最後の最後まで、走り、集中し、戦い抜いた。

 サランスクの奇跡。

 いい表現である。1996年夏、西野朗監督が率いたアトランタ五輪代表がブラジル代表を破ったマイアミの奇跡に引っ掛けたもの。時を経て、それは再現された。ロシアワールドカップ、グループリーグ初戦。日本は、強敵コロンビアを2-1で撃破した。早々に相手が一発レッドで退場し、途中出場のハメス・ロドリゲスの状態も良くなかった。運も実力のうちだ。誇っていい、素晴らしい勝利であった。

 個々が体をぶつけ、守備を助け合い、チャンスに集団で襲い掛かる。

 なぜここまで勇敢に戦えたのか――。

 1つは、2014年ブラジルワールドカップの失意がある。

 時計の針を4年前に戻すと、アルベルト・ザッケローニ監督率いる日本代表は初戦、コートジボワールから先制点を奪いながらも、後半に逆転されて敗北を喫した。これが尾を引き、2戦目は1人少ないギリシャにスコアレスドロー。後のない日本は3戦目、コロンビア相手に1-4と大敗を喫した。

 大会後、指揮官が住むイタリアのリゾート地・チェゼナティコを訪れ、インタビューに応じてもらった。コートジボワール戦での“消極性”に話は及んだ。

 「(試合の)特に最初のほう、我々の出来は悪くはなかった。高い位置でボールを奪ってのショートカウンターもできていた。だがチャンスを活かせずにミスを重ねていくことでチームの不安が増していったように思う。悪いボールの取られ方をして、カウンターを食らう形になってしまった。そうなると各々の距離感が広がってきて、いつもやっていることができなくなってくる。自分たちのコンビネーションも出せない。

 ボールを持っていないときは、そんなに問題じゃない。要は、ボールを持ったときだ。いつもであればお互いの距離が短く、たくさんの選択肢を持ちながら相手ゴールに向かって仕掛けていくことができる。自分たちのやるべきことは明確なのに、100%やりきれなかった。たとえうまくいかなったとしても、信じ切る力、やり続ける力が必要だったというのが指揮官としての私の感想だ。もちろんその責任は私にあるのだが」

 自分たちを信じ切れなかった――。ザッケローニ監督は言葉をこう続けた。

 「全員がボールを欲しがらなければならないし、全員が(パスコースの)選択肢を出してあげなければならない。我々のアイデンティティーは、相手陣内に押し込んでサッカーをすることだ。それはフィジカルで世界より劣っている我々が、取るべき道。自分たちを信じて2点目を取っていれば、3点目も続いていたのかもしれない」

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